平素より多言語サービス基盤「言語グリッド」をご利用いただき,誠にありがとうございます. 2007年より運営を続けてまいりました言語グリッドは,1か月後(2026年3月31日)にサービスの提供を終了することとなりました.
言語グリッドは京都大学大学院社会情報学専攻において運営が開始され,2018年以降はNPO言語グリッドアソシエーションが運営主体として継承し,約20年にわたり多言語コミュニケーションを支える基盤としてサービスを提供してまいりました.この間,バンコク,ジャカルタ,新疆においても運営組織が設立され,23か国177団体の皆さまにご参加いただきました.皆さまのご協力により,登録された言語サービスは総計225サービスにのぼります.
これまでの活動の経緯や設計思想,サーバソフトウェアのアーキテクチャ,社会的意義については,Wikipediaの記事(言語グリッド)に整理されております.ご関心がございましたら,ご参照いただけますと幸いです.
言語グリッドは,2002年に実施した異文化コラボレーション実験を契機として構想されました.多言語コミュニケーションの支援には,利用者自身が自由に言語サービスを組み合わせることのできるインターネット上の基盤が不可欠であるとの考えのもと,その構築と運営に取り組んでまいりました.その後,ニューラルネットワークによる機械翻訳技術の飛躍的進展を受け,専門分野辞書やユーザ辞書と連携することで,コミュニティごとにカスタマイズ可能な翻訳環境を実現する言語グリッドの有用性はさらに高まりました.
しかしながら,近年の大規模言語モデル(LLM)の登場により,言語処理ツールや言語データといった多様な言語資源を草の根的に組み合わせることなく,プロンプトによって翻訳方針を柔軟に指定できる環境が整いつつあります.この技術的転換を踏まえ,言語グリッドはその役割を果たしたものと判断し,ここにサービスを終了することといたしました.
今後は,単なる翻訳機能の提供にとどまらず,文化差による話者間の誤解を解消することを目的として,対話を通じて翻訳を行う「翻訳エージェント」の研究へと発展させてまいります.これまで言語グリッドで培ってきた知見を基に,異文化コラボレーション支援の新たな形を探究してまいります.
これまでご支援ご参画いただきましたすべての皆さまに,心より感謝申し上げます.