No.25 
2010年10月1日号 

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言語グリッドニュースレターについて

言語グリッドバンコクオペレーションセンターの運営開始

9月からタイの国立電子・コンピュータ技術研究所(NECTEC)が言語グリッドバンコクオペレーションセンターとして、言語グリッドの運営を開始いたしました。本言語グリッドでは、非営利目的および研究目的での利用が許可されています。

現在、タイ語の形態素解析や、英タイ翻訳、英タイ対訳辞書、タイ語の音声合成などNECTECがこれまで研究開発してきたタイ語の言語サービスが6種登録されています。今後もアジア言語を中心に多様な言語サービスが追加されていく予定です。

10月からは京都大学社会情報学専攻が運営する言語グリッドと連携させて連邦制の運営も開始する予定です。これにより、上記の6種の言語サービスのうち、連携利用の許可されたサービスが皆さまにご利用いただけるようになる予定です。

バンコクオペレーションセンターの運営している言語グリッドに登録されている全ての言語サービスをご利用になられたい場合は、バンコクオペレーションセンターと覚書を締結してください。覚書締結の詳細はバンコクオペレーションセンターの参加方法をご覧ください。


バンコクオペレーションセンター Webサイト
バンコクオペレーションセンター Webサイト

タイ語の言語サービス
タイ語の言語サービス

日韓Webcam交流イベントの報告

NPO法人パンゲアは世界の子ども達が言葉・時間・距離・文化の壁を乗り越えて個人的な「つながり」を感じることができる遊び場を提供する研究開発型のNPOです。

パンゲアが始まるきっかけともなった9.11同時多発テロと同日の9月11日に東京と韓国・ソウルで「日韓Webcam 交流イベント」を開催しました。

当日実施したゲームの一つ「なぞれん」は、答えを知らない相手国のチームメイトにヒントを一つずつ出して答えを導いていく連想ゲームです。相手の顔をWebcam越しに見ながら多言語チャットを使ってヒントのやりとりをします。相手の環境や知っている情報を想像しながら入力したヒントで正解を答えてもらった子ども達はとても興奮していました。

技術的には、当法人で独自開発したWebcamシステムのチャット部分に、言語グリッドの辞書連携翻訳サービスを組み込みました。事前に、各チームで相手国側へのヒントを考えるのですが、子ども達は言語グリッドToolboxのテキスト翻訳機能で折返し翻訳を確認していました。多言語チャットでもToolboxでも、同じように辞書連携された翻訳結果が出てくるのは、Webサービスである言語グリッドならでは。ほとんどの子ども達が「言語グリッドは、とても役に立って楽しいので、また使ってみたい!」とアンケートで答えていました。

また、参加スタッフはToolboxの掲示板に当日気付いた点などを詳細にレポートしてくれています。お互いのチーム、相手国で起こったこと、様々なアイデアや意見をToolboxから得て、これからの活動に活かしていきたいと思っています。


(NPO法人パンゲア)


Wikipedia翻訳プロジェクトの開始

Wikipediaの記事は世界中のボランティアコミュニティで議論されながら作成されていますが、記事数は英語版Wikipediaが他の言語版Wikipediaを圧倒しており、知識の言語障壁が生まれています。多言語での議論を通してWikipediaの記事を様々な言語へ翻訳することを目的とした「Wikipedia翻訳プロジェクト」が、この夏に京都大学情報学研究科社会情報学専攻の石田・松原研究室で始まりました。まずは米国の国立公園に関する英語記事を、英語話者と日本語話者が協力して日本語記事を作成する実証実験を行っています。これにより、多言語での記事作成のプロセスを分析したり、それを支援するシステムを評価したりしています。

システムはNICTと共同開発しており、実際のWikipediaで使われているMediaWikiと呼ばれるシステムに言語グリッドToolboxを適用しています。これにより機械翻訳による多言語ディスカッション機能や、記事単位での対訳辞書の作成・編集機能、テキスト翻訳機能などが可能となりました。また本プロジェクトに必要な機能のみに極限まで特化した言語グリッド本体のソフトウェアも開発しています。

本プロジェクトはWikipediaを運営しているWikimedia財団も興味を示しており、現在Wikimedia財団のエンジニアが本システムのレビューをしています。我々は実際のWikipediaへ本システムを組込むことで、全世界のWikipediaの利用者を支援することを目標としています。



英語記事の日本語版作成実験での日本語話者と英語話者とのディスカッション例(英語表示モード)日本語話者が“Going-to-the-Sun Road”の意味を尋ねている
 
英語記事の日本語版作成実験での日本語話者と英語話者とのディスカッション例(英語表示モード)
日本語話者が“Going-to-the-Sun Road”の意味を尋ねている


(京都大学 石田・松原研究室)

Language Grid Toolbox ver. 2.4 リリース

翻訳結果の音声読み上げ
 
翻訳結果の音声読み上げ

 

多言語コラボレーションツールLanguage Grid Toolboxの新機能が10月4日にリリースされます。

  • BBSへのメッセージ投稿のメール通知

BBSにメッセージが投稿された際に、ユーザにメールで通知する機能です。メッセージが投稿されたカテゴリ・フォーラム・トピックや、メッセージ投稿の日時、メッセージの一部が通知されます。通知の頻度は、「メッセージ投稿ごと」「一日に一回」「通知しない」のいずれかから選択できます。

  • 翻訳結果の音声読み上げ

テキスト翻訳機能で得られた翻訳結果を、音声で読み上げることができます。また、読み上げられる音声をファイルとしてダウンロードすることもできます。現在、言語グリッドに登録されている音声合成サービスを利用することで日本語と英語、中国語の読み上げが可能です。

  • メタ翻訳

入力文のうち翻訳したくない箇所を<skip_translation></skip_translation>というタグで囲むことで、入力した言語で翻訳結果に出力することができます。例えば、「<skip_translation>独立行政法人</skip_translation>は英語で何と言いますか?」を英語に翻訳すると「What does 独立行政法人(Independent administrative agency) say in English?」のように翻訳結果の英文中で日本語を参照できます。



定期メンテナンス 11月・12月

11月・12月の定期メンテナンスは、11月1日(月)、12月6日(月) 18:00-21:00 (JST)に行います。この日時に言語グリッド利用の予定がある場合は、事前にoperation [at] langrid.orgまでご連絡ください。



言語グリッド ユーザ紹介(25) 米国航空宇宙学会(AIAA)衛星通信フォーラム(JFSC)

Space Japan Review, No. 67, 4月/5月号 2010の表紙
 
Space Japan Review, No. 67, 4月/5月号 2010の表紙

 

米国航空宇宙学会(AIAA)の通信システム技術委員会(TCCS)のサブコミティーとして1999年1月発足したAIAA Japan Forum on Satellite Communications(AIAA 衛星通信フォーラム)です。衛星通信システムの研究開発分野を対象として、4年ごとのアジアでの国際会議(AIAA ICSSC)や展示会等の開催を行うとともに、機関誌Space Japan Review(隔月刊和文英文誌)をウェブ(http://satcom.nict.go.jp/)で発行しています。1999年2月号を創刊号として、2010年8月/9月号で69号を数える長寿機関誌です。

月に1度、編集委員会を開催し、記事の企画相談や投稿状況の把握を行っていますが、課題は「翻訳」です。これまで翻訳の専門家に依頼したり、市販の翻訳ソフトを購入して補助的に使用してきました。今年から言語グリッドツールボックスを使わせていただいておりますが、編集委員で衛星通信関連の用語辞書を作成すること、委員会内の共同作業で翻訳を行うこと、これは市販翻訳ソフトではできないことで言語グリッドに期待しています。最近ではウェブ上で学会雑誌を発行することは当たり前のようになってきましたが、本誌創刊の頃はまだ珍しかったと思います。かなりハードルが高いことですが、将来は日英だけではなく複数の言語での機関誌発行を目指していこうと考えています。面白い記事が揃っていますので、上記のURLをアクセスいただけると幸いです。


(Space Japan Review編集委員長:情報通信研究機構 高級研究員 若菜 弘充)