No.28 
2011年7月1日号 

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言語グリッドニュースレターについて

「京大翻訳!」に災害辞書を追加

京都大学に特化した翻訳サービス「京大翻訳!」では、今回の東日本大震災を受け、災害ニュース翻訳プロジェクトを4月より開始しました。

日本在住の日本語を得意としない外国人や海外の方が、日本語で提供されるニュース記事を読むことができず、正しい情報を得ることができないという現状があります。そこで、京都大学情報学研究科石田・松原研究室では、災害関連のニュース記事の翻訳サービスの実現を目標に災害辞書の作成を行い、「京大翻訳!」への追加を行っています。


ユーザ拡張辞書



  ■災害関連の辞書作成

4月より、継続的に災害関連ニュース記事やWHO報告、Wikipedia記事などから専門用語抽出を行っており、約5、000語の日英中の辞書を独自で作成し、「京大翻訳!」で利用しています。さらに、アジア防災センターなどから防災関連辞書の提供を受け、現在1万以上の災害関連辞書が連携されています。


  ■ユーザ拡張辞書機能

ユーザが、「京大翻訳!」に登録し辞書連携したい用語があった場合に、即時登録・連携を可能とする『ユーザ拡張辞書機能』を追加しました。ユーザにより登録された用語や訳語の閲覧・変更は作成した日のみ可能となっていますが、登録後1週間、「京大翻訳!」上で利用されます。また、有用と判断された単語や訳語は、恒久的に「京大翻訳!」に組み込まれます。是非、ユーザ拡張辞書機能を使い、災害関連用語の辞書追加にご協力ください。





言語グリッドがWikimedia財団の研究プロジェクトに


Wikimediaの多言語環境


Wikimedia財団の運用する、インターネット上の百科事典「Wikipedia」では英語の記事が354万本あるのに対し、日本語は73万本、タイ語は6万本など言語によって大きな偏りがあります。

そこで、異なる言語で記述された記事の翻訳を加速するために、NICTと京都大学は、Wikimedia財団と共同で言語グリッドを応用した多言語環境を構築しました。

この多言語環境では、Wikimedia財団用に最適化し保守性やパフォーマンスを向上させた言語グリッドを用いて、多言語掲示板システムをMediaWikiのエクステンションとして開発しました。これにより、記事を理解する利用者と翻訳を行う利用者との多言語の議論を支援することができます。

今後、この多言語掲示板システムを含む多言語環境構築の取り組みは、Wikimedia財団の研究プロジェクトとして位置づけられ、Wikimedia財団が運用する多様なWikimediaプロジェクトの多言語化に貢献していきます。



 
 
 
 
 
 
 
 
 

上海と京都をつなぐ「臨場感・異言語・異文化交流ナレッジサロン」

上海と京都をTV会議システムでつなぐ「臨場感・異言語・異文化交流ナレッジサロン」をオープンしました。このサロンは、財団法人京都高度技術研究所と京都府上海ビジネスサポートセンター間を結ぶもので、京都の中小企業の中国進出や中国企業の誘致を支援するものです。


オープニングセレモニーでは、言語グリッドのデモが行われました。情報学研究科の稲葉利江子特定講師の司会のもと、京都側のデモ担当者から京都府上海ビジネスサポートセンターにむけて挨拶すると、上海側画面に中国語で表示されると同時に中国語音声が流れ、上海・京都双方の出席者から歓声があがりました。

今後、TV会議システムを利用した交流サロンで、距離を感じさせない快適なコミュニケーションの実現が期待されます。




【関連情報】
京都市ベンチャービジネスクラブ機関紙、 SHAKE HANDS LETTER Vol.247、 2011年5、6月号、 p.5.




言語グリッドを用いたベトナム農業支援 YMC Vietプロジェクト ~ベトナム児童と日本の農業専門家の言葉の壁を言語グリッドが越える~


YMCモデル

NPOパンゲアでは児童とICTによるベトナム農業支援「YMC Vietプロジェクト」を始めました。パンゲアが兼ねてから提唱していた、児童を介して専門知識を非識字の保護者に届ける「YMCモデル: Youth Mediated Communication Model)」という新しい途上国支援モデルのメコンデルタ地帯での実証です。昨年度の総務省ユビキタスアライアンス・プロジェクトとして、NTTコミュニケーションズが代表申請者のもと、ベトナム政府の協力も得て行われました。東京大学・東京農業大学・三重大学・中央農研の教授/研究者や稲作従事者に農業専門家として協力頂きました。


田んぼの状態を撮影する子供

児童は携帯電話や近所のカルチャーセンターのPCから、パンゲアの「YMCシステム」を利用して、親の田んぼの状況を日本の農業専門家に質問や問題があればベトナム語で投稿します。PCが初めてでも用例をクリックするだけで簡単に質問が投稿できます。日/英/ベトナム語からなる農業辞書・用例対訳が多数用意され言語グリッドに事前に登録されており、言語グリッドを通して児童の質問は専門家に日本語になって届けられます。専門家はそれらに答え、またベトナム語で子供のわかりやすい言葉にするブリッジャ(橋渡し役)を介して子供に返信されるのです。


YMCシステム




センターからの帰宅中に忘れてしまうであろう児童のために、持ち帰れる写真や図が豊富な農業知識カードが提供されています。参加児童へのインタビューでは「日本の専門家から返信が来るのがとっても楽しかった。将来自分も農業専門家になりたい!」という声もあがっていました。

児童はキーボード入力でのコメント投稿もできますが、"a"のような装飾ベトナム語文字入力が難しく、機械翻訳がうまくいかないといった課題なども見えてきました。今後はこのような課題を言語グリッドチームと一緒に解決していけたら、と思います。パンゲアでは、言語グリッドを言語インフラとして最大限に利活用し、YMCモデルを他の専門分野や言語圏にも展開していきたいです。

(NPOパンゲア 高崎 俊之)




言語グリッド ユーザ紹介(28):株式会社ハウスセゾン

株式会社ハウスセゾンは、留学生の生活支援を目的に言語グリッドを利用しています。 京都市国際推進室の提案により始まった京都異文化コラボレーション協議会の活動の一環として、Language Grid Toolboxを拡張した「留学生のための多言語住宅情報Q&Aシステム」と、そのコンテンツを店頭で表示するシステムを作成しています。また、賃貸専門辞書約1500語と賃貸マンションで良くある質問応答を、新たに言語グリッドに登録し利用しています。

さらに、立命館大学 情報理工学部 情報コミュニケーション学科 セマンティックコミュニケーション研究室(桑原研究室)の協力を得て、言語グリッドの利用シーンを留学生寮用に作成しました。例えば、留学生が寮を出る際に、民間の賃貸マンションをスムーズに借りることができるようにサポートすることを考えています。

(株式会社ハウスセゾン 中井俊彦)




留学生のための多言語住宅情報Q&Aシステム



新編集長よりごあいさつ

    

このたび、角川さん、宮口さんに続き三代目の編集長を務めさせていただくことになりました久保田と申します。

2008年7月1日に第1号が発行されてから、この第28号でちょうど3年になります。この3年の間に、言語グリッドの利用組織は、8カ国50組織から16カ国139組織になりました。さらに世界で広く使われるよう活動を続けていきたいと思います。

これからも、みなさまのお役に立つ情報、活動をご紹介していきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

(言語グリッド京都オペレーションセンター 久保田 庸子)




定期メンテナンス 7月・8月・9月

 定期メンテナンスを下記の通り予定しております。この日時に言語グリッド利用の予定がある場合は、事前にoperation [at] langrid.orgまでご連絡ください。

  • 7月4日(月)18:00-21:00 (JST)
  • 8月1日(月)18:00-21:00 (JST)
  • 9月5日(月)18:00-21:00 (JST)