No.33 
2015年6月号 

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言語グリッドニュースレターについて

言語グリッドの技術紹介(連載):第1回 Groovyで手軽に言語サービスを呼びだそう


今号から、言語グリッドの技術紹介を連載することになりました。言語グリッドには様々な技術が使われていますが、その中でもユーザサイドよりの技術をピックアップし、サービスやアプリケーションの開発に役立つものを紹介していく予定です。第一回目は、言語サービスの呼び出しを扱います

さて、言語グリッドのサービスを呼び出すには、どのような準備が必要で、何行のコードを書かなければいけないと思いますか?最もシンプルなケースでは、非常に簡単です。実際に翻訳サービスを呼び出すコードを見てみましょう。

    -- call.groovy --
    @Grab('net.servicegrid:jp.go.nict.langrid.client.soap:1.0.5')
    @Grab('net.servicegrid:jp.go.nict.langrid.service.language_1_2:1.0.5')
    import jp.go.nict.langrid.client.soap.SoapClientFactory
    import jp.go.nict.langrid.service_1_2.translation.TranslationService

    println new SoapClientFactory().create(
      TranslationService.class,
      new URL("http://langrid.org/service_manager/invoker/KyotoUJServer"),
      "yourid",
      "yourpass").translate("en", "ja", "hello")
    ----

"yourid"と"yourpass"は、言語グリッドID/Passwordに置き換えて下さい。
これはGroovyというプログラム言語で記述した、JServerを呼び出すプログラムです。
Java(*1)とGroovy(*2)をダウンロード&セットアップし、以下のコマンドを実行して下さい。
(${groovy_home}はGroovyを展開したディレクトリに置き換えて下さい)。

    ${groovy_home}/bin/groovy call.groovy

すると、必要なライブラリが自動的にダウンロードされ、JServerが呼び出され、"hello"が日本語に翻訳されて表示されます。

想像していたより簡単だったのではないでしょうか?もちろんこの程度の手間で済むのはGroovyの機能によるところも多いですが、言語グリッドプロジェクトもそのための仕掛けを行っています。このあたりは次回以降、詳しく解説していきますのでお楽しみに。

*1http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html
*2http://www.groovy-lang.org/index.html

(京都大学情報学研究科 特定研究員 中口孝雄)


ACM CHI 2015 で言語グリッドが論文の翻訳に活用されました


 2015年4月18日から23日に韓国ソウルで開催されたヒューマン・コンピュータ・インタフェース分野の国際会議 ACM CHI 2015において、論文のアブストラクトの多言語化に言語グリッドが活用されました。言語グリッドプロジェクトのOGでもある山下主任研究員(NTTコミュニケーション科学研究所, CHI2015 Translation Co-Chair)からの発案で始まったこのプロジェクトでは、専門用語辞書を登録した言語グリッドToolboxを使って、600本ほどの論文の英文アブストラクトが日本語、中国語、韓国語へ翻訳され、Webサイトを通じて国際会議の参加者約800人に提供されました。


WLSI 2015開催報告


2015年1月22日から23日に京都大学で The Second International Workshop on Worldwide Language Service Infrastructureが開催されました。本ワークショップでは、世界規模で相互運用可能な言語サービス基盤の構築を目指して、サービス間の相互運用やサービスの運用・管理手法、言語サービスを用いたアプリケーションなどについて15件の研究発表が行われました。また、言語グリッドだけでなくMETA-SHARELAPPS GridPANACEAMLiなど言語サービス基盤を推進する欧米の主要プロジェクトの代表者による招待講演も行われ、基盤間の相互接続やプロジェクト間の国際連携に向けて活発な意見交換が行われました。

WLSI2015の会議の様子

その結果、米国言語資源協会(LDC)が参加するLAPPS Gridと、欧州言語資源協会(ELRA)が立ち上げるELRA言語グリッド、アジアのオープン言語グリッドを連携し、2015年10月を目処に連邦運営を開始することが合意されました。この連邦制が実現すると、LAPPS Gridに既に登録されている111言語サービスに加えて、LDCが所有する708言語資源、ELRAの所有する1,129言語資源を言語サービスとして共有し相互に利用可能となることが期待されます。今後、サービスグリッドサーバソフトウェアの配備や試験運用など順次実施していく予定です。




異文化コラボレーション研究会開催報告


2015年2月23日に京都大学吉田キャンパスにおいて、「異文化コラボレーション」研究会との共催で、電子情報通信学会「人工知能と知識処理」研究会が開催されました。テーマは、「言語グリッドと異文化コラボレーション」で、全部で5件の発表がありました。

発表された内容は、異文化間チャットシステムの開発、外国人向けの敬語文理解支援システム、海外支援のためのソーシャル・ビジネスアプリケーションの開発、クラウドソーシングを用いた用例対訳作成手法、多言語穴あき用例対訳の利用可能性の研究などです。異文化コラボレーションに関する、興味深い発表がたくさんあり、充実した議論が行われました。


国際会議SETECEC 2015でBest Paper Award受賞


言語グリッドを利用した多言語ゲーミングシミュレーションに関する研究が、Fourth International Conference on Software and Emerging Technologies for Education, Culture, Entertainment, and Commerce(SETECEC 2015)にてBest Paper Awardを受賞しました。研究を進めておられる早稲田大学野瀬泰史君、菱山玲子教授、おめでとうございます!

    受賞論文:Taishi Nose, Reiko Hishiyama. Analysis of Context Protocols by Conversation Tagging in Multilingual Gaming Simulation, Fourth International Conference on Software and Emerging Technologies for Education, Culture,Entertainment, and Commerce (SETECEC 2015), Venice, Italy, March 11-13, 2015.
    受 賞 者:野瀬泰史、菱山玲子(早稲田大学)

言語グリッドプロジェクト紹介:第1回KISSY実施


2014年7月31日から8月5日にNPO法人パンゲア主催で、第1回KISSY(Kyoto Intercultural Summer School for Youths)が実施されました。このイベントでは、ITを活用して共同で作品を創り上げることで、言語や文化の違いを乗り越えて交流することを目的として、世界4カ国(ケニア・韓国・カンボジア・日本)から9歳から14歳の児童が参加し、5泊6日の寄宿型ワークショップを行いました。京都大学の石田・松原研究室も共催として参加しており、児童達のコミュニケーションで使う多言語チャットと多言語掲示板からなるシステムに言語グリッドを利用しています。

実質的なワークショップは、8月1日から4日の4日間行われ、最初の3日間は4、5人のグループで作品を創り、4日目に各グループで製作した作品について発表会が行われ、各グループの児童自身でプレゼンテーションを行いました。石田・松原研では、この期間のチャットログや活動の様子を写した動画などのデータを分析しており、児童達の多言語コミュニケーションにおける特徴や問題の抽出を試みています。

第1回KISSY参加者からの好評を受けて、2015年7月31日から8月7日に第2回KISSYが行われる予定となっています。


多言語チャットや掲示板を利用したディスカッション

言葉や文化の異なる子供達が共同で作品を創る


言語グリッド ユーザ紹介(第33回):東邦大学 中島研究室

MAGCruiseのWeb画面

東邦大学理学部情報科学科中島研究室では、人々の活動を計算機上に再現するマルチエージェントシミュレーションの研究を行っています。

当研究室と言語グリッドプロジェクトとの関わりですが、当研究室では、第31回ニュースレターでも紹介されていた「YMCVietプロジェクト」に協力していました。このプロジェクトは、児童を介した多言語間の知識伝達モデル(YMCモデル: Youth Mediated Communication Model)をベトナムで実証するというものです。このプロジェクトでは、日本の高度で豊富な稲作の農業知識が、Web上にある言語資源やボランティアの力を組み合わせて翻訳され、ベトナムの稲作農家の子供たちへ伝えられました。

本研究室では、このような多言語によるコミュニケーションが存在する活動を、コンピュータ上で模擬的に再現し体験するシステムMAGCruisを開発しています。最近はこのMAGCruiseを使って、ボランティアがどのような翻訳作業をすると効率的か、どのようなフィードバックを返すとボランティアのモチベーションが上がるかといったことを調べています。

(担当教員:中島 悠)


定期メンテナンス: 2015年7月・8月・9月


下記の通り予定しております。この日時に言語グリッド利用の予定がある場合は、事前にoperation [at] langrid.orgまでご連絡ください。

  • 7月14日(火)16:00-20:00(JST)
  • 8月11日(火)16:00-20:00(JST)
  • 9月8日(火)16:00-20:00(JST)

毎月第二火曜日16:00-20:00 (JST)にメンテナンスを実施致します。
言語グリッドのポータルサイトのWhat's newにも掲載いたしますので、こちらhttp://langrid.org/jp/をご覧ください。