No.27 
2011年3月31日号 

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この度の東北地方太平洋沖地震において被災された皆さま、そのご家族、関係者の皆さまに心からお見舞い申し上げます。

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言語グリッドニュースレターについて

言語グリッドの連邦制運営を開始しました

言語グリッド京都オペレーションセンター(京都大学社会情報学専攻)と言語グリッドバンコクオペレーションセンター(NECTEC)による言語グリッド連邦制運営の開始に伴い、2月14日にプレスリリース(NICT京都大学)を行いました。また同日に、NICT、京都大学、NECTECの3組織をテレビ会議システムで接続し、日泰合同の記者発表およびデモを実施しました。プレスリリースの内容は、読売新聞、産経新聞、日刊工業新聞、日経産業新聞、京都新聞など国内のメディアだけでなく、タイのバンコクポスト(英語)などでも報道されました。

合同記者発表では、京都オペレーションセンターの言語グリッド(登録数:51言語106サービス)に登録されている日英翻訳サービスと京都観光辞書サービス、バンコクオペレーションセンターの言語グリッド(登録数:13言語20サービス)に登録されている英泰翻訳サービスとタイ語の音声合成サービスを連携させることで、バンコクにいる参加者にタイ語の音声で京都観光を説明するデモを行いました。

 
 
日泰合同記者発表(左からNECTEC、京都大学(テレビ会議経由)、NICTの様子)

 

言語グリッドシンポジウム2011開催のご報告


 

言語グリッドプロジェクトの5年間の成果報告として、東京(2月21日)と京都(2月22日)でシンポジウムが開催されました。

初めに、言語グリッドの現状と今後の展望についての講演が行われ、18カ国140組織が参加したサービス指向の言語基盤の構築、日本とタイの連邦制運営によるアジア展開、オープンソース化による利用促進が到達点として示されました。また、今後の展開として、さらなる世界展開や言語サービスの品質保証、言語以外の異種のグリッドの連携が挙げられました。なお、ご講演者の許可をいただいた講演スライドについては、Webサイトに順次掲載しています。


 

続いて、東京会場では言語グリッドのソフトウェアの基盤となるサービスコンピューティング技術の応用に関する今後の展望について、京都会場では参加組織による言語グリッドの現場への適用についての講演が行われた後、多文化共生・国際交流活動の現場に通じたNPOの方を交えてパネルディスカッションが開催されました。両会場とも50名以上の方にご参加いただき、活発な質疑が行われました。


 

また、締めくくりとして言語グリッドの各参加組織によって、言語グリッドを用いたソフトウェアのデモンストレーションが行われました。NICTとNECTECからは、京都オペレーションセンター・バンコクオペレーションセンターによる言語グリッド連邦制と、連邦制に対応した最新版の言語グリッドToolboxが紹介されました。また京都大学からは、京都大学での利用に特化した翻訳サイト「京大翻訳!」、Wikipedia記事多言語化のプロジェクトやToolboxを用いて留学生を支援するG30コミュニティサイトが紹介されました。言語グリッドを多言語コミュニケーションの現場に利用してきた各組織からは、実際にソフトウェアを動かしながらその活動が紹介されました。多文化共生センターきょうと・和歌山大学からは、医療現場での多言語の対話を支援するM3(エムキューブ)が、関西大学からは学校現場の用語集を提供する多言語学校プロジェクトが、関西学院大学からは世界の子どもたちが協働学習を通じて防災マップを作成するCoSMOSが紹介されました。またNPOパンゲアからは、2月に実施されたばかりの、現地の子どもたちを通じたベトナム農業支援活動が紹介されました。



言語グリッドを用いた多言語ゲーミングシュミレーション FOST賞受賞

早稲田大学理工学術院 菱山玲子准教授による研究「科学技術コミュニケーションの可能性を拡げるサイエンスカフェと参加型ゲーミングシミュレーションの融合」が、財団法人科学技術融合振興財団(FOST, Foundation for the Fusion Of Science and Technology)による「第4回FOST賞」を受賞しました(Impress Watch記事)。FOSTでは、科学と技術の融合に関する調査研究に対して研究助成を行っており、FOST賞は助成対象のうち最も優れた研究に贈られます。受賞対象となった研究は、インターネットを介して母言語で参加できる広域型ゲーミングシミュレーションを、言語グリッドを用いて実現したもので、多言語(母国語)によるサイエンスコミュニケーションの実現、サイエンスカフェと参加型ゲーミングシミュレーションの融合といった点が評価されての受賞となりました。



今後の言語グリッドのサービスについて

本年3月をもって、NICT言語グリッドプロジェクトを含むNICTの第2期中期計画全体が終了いたしますが、NICTは第3期中期計画(2011年~2016年)において言語グリッドを発展させた汎用的なサービス基盤の研究開発に取り組んでいき、言語グリッドのソフトウェアや言語サービスのラッパーの維持管理と機能強化を続けていきます。またNICTによる言語グリッドToolboxのクラウドサービスに関しても継続して提供していきます。

ただし、プロジェクトの切り替えに伴い、NICTで提供されてきたJ-Server(サービスID:NICTJServer)及びWEB-Transer(サービスID:NICTCLWT)の提供は3月末をもって終了させていただく予定です。ご利用になられていたユーザは代替サービスに切り替えて頂きますようお願いいたします。



定期メンテナンス 3月・4月

3月の定期メンテナンスは、3月7日(月)に行われました。なお、4月の定期メンテナンスは、4月4日(月)18:00-21:00 (JST)に行います。この日時に言語グリッド利用の予定がある場合は、事前にoperation [at] langrid.orgまでご連絡ください。



京大翻訳! 運用開始

京都大学石田・松原研究室は、京都大学生活協同組合と共同で、京都大学に特化した翻訳サービスである『京大翻訳!』の運用を開始し、2月10日にプレスリリースを行いました。

京都大学に関係する多言語文章より日英15,000語以上、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語も5000語以上の専門用語を抽出して多言語辞書を作成し、言語グリッドによって機械翻訳と連携させることで、京都大学のコミュニティに特化した翻訳サービスの提供を可能としました。京大翻訳!を用いることで、京都大学に特化した日中韓英の翻訳結果を得られるとともに、京都大学の建物名や科目名、周辺の通名、教務などの事務手続きの用語などを収録した辞書の検索ができるなど、京大関連の翻訳を行う際に便利です。

機械翻訳の課題の一つに、特定のコミュニティ内で利用される用語や言い回しの翻訳が困難であることが挙げられます。例えば、京大周辺の「東大路通(ひがしおおじどおり)」が某翻訳サイトでは、「Tokyo University Road」と訳されてしまいます。京大翻訳では、抽出された専門用語の多言語辞書を用いることで「Higashioji St.」と正しく訳されます。

また、専門用語の抽出と共に、京都大学関連の多言語文章から用例対訳2,000文以上の抽出を行いました。抽出された用例対訳の検索機能の他、情報学研究科黒橋教授のグループが研究開発を行っているKyotoEBMTを用いることにより、翻訳精度の向上にも努めています。

    
 
京大翻訳!による翻訳例

 

言語グリッド ユーザ紹介(27) 京都大学生活協同組合


 

京都大学生協では、京都大学情報学研究科・稲葉利江子特定講師他皆様のご支援をいただき、2011年2月10日より、当生協ホームページ上にて、言語グリッドを用いた「 京大翻訳!」の展開を開始しました。

「京大翻訳!」は、一言でいえば「京都大学で大学生活を送る人のための翻訳サイト」です。京都大学に関連する、建物・講義室名、講義名、教員名、周辺地理名称、生協店舗名等、約15,000語の英語辞書登録を行う(中国語・韓国語は約5,000語)ことで、精度の高い翻訳を行うことを可能にしています。

京都大学では、平成23年度より、工学部での学士課程英語コース設置等の環境変化の中で、キャンパスライフ全般に渡る留学生の生活支援強化が大きな課題となっています。京都大学生協は、留学生自身が構成する「留学生委員会」が中心となり、ハラル食の提供や、留学生の相互交流の場面づくり等を進めてきましたが、今回の「京大翻訳」も、留学生の生活支援のツールとして役割を発揮するものと期待しています。

今後、このツールの活用を通じて、留学生の京大での生活がより充実し、意義深いものとなるよう、福利厚生面からのサポート内容強化を目指していきたいと思います。





(京都大学生活協同組合 専務理事 中森一朗)